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大阪地方裁判所 昭和50年(ワ)4303号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一被告明建建設に対する請求について

1 原告は原告土地を敷地とする原告ビルを所有するものであること及び被告明建建設は別紙敷地位置関係図のとおり原告土地の南側と西側とを囲むように位置する被告土地上に被告ビルを建築する本件工事を被告長谷川から請負い施工したものであることは当事者間に争いがない。

2 原告は本件工事により原告ビルに沈下・傾斜等の被害が生じた旨主張するので、以下右被害の有無について検討する。

<証拠>を総合すると、以下の事実を認めることができる。

(一) 被告明建建設は、昭和四九年一一月下旬ころ、本件工事の基礎工事に着工したが、まず、原告ビルの南側及び西側の壁面に沿つて壁面から一五センチメートルの範囲内に厚み約一〇センチメートルの土留め用の鋼矢板(シートパイル)を五ないし六メートルの深さまでハンマーで打込み、右鋼矢板に沿つて被告土地全体を約二メートル堀下げたうえ、コンクリートの基礎杭を約一メートルの間隔で地表から三七メートルの深さまで打設し、昭和五〇年二月ころ右基礎工事を完了すると共に前記土留め用の鋼矢板を抜取つた。その後同被告は順次被告ビルの本体を建造し、同年九月ころ本件工事を完了した(以上の事実は概ね当事者間に争いがない。)。

(二) 原告ビルは、昭和三五年一一月ころ建築された鉄筋コンクリート造陸屋根地下一階塔屋付四階建の建物で、基礎は一〇メートル余の松丸太の杭を打込んだ上に鉄筋を組み、一面にコンクリートを流し込んでいわゆるベタ基礎にしたものであるが、本件工事により何らかの被害が生ずる場合に備え、原告ビルの現状を確認する意図で、右工事着工後の昭和四九年一二月二日ころ、被告明建建設が原告立会のうえ原告ビルの傾斜の有無を調査するための下げ振りを実施した結果では原告ビルに傾斜は認められなかつた。ところがその後本件工事の基礎工事の進行とほぼ併行して、原告ビルは被告土地に面した南側が二ないし三センチメートル前後沈下し、屋上部分で基底部分に比べ約八ないし一〇センチメートル被告ビル側に傾斜する結果となつた。

そして、原告ビルは、陸屋根の屋上に降下する雨水を排水するため、屋上の南側を北側より若干高くして勾配をつけ、北側に排水溝を設けてそこから樋で雨水を地上に誘導するようになつていたが、右沈下・傾斜が生じた結果、雨水が北側の排水溝に集まらず屋上南側に溜まるようになつたため、屋内に雨漏りが生じており、これが原因で天井等に一部腐触も生じ、また、右沈下のため降雨時には雨水が東側の一階入口から原告ビル内に流入しやすくなり、この雨水が地下室へ通じる開き戸の隙間から内部に浸入するため、地下室には雨水が溜まつた状態となつている(もつとも、現在では原告が降雨時には一階入口前にある量水器の蓋をはずすようにしているので、雨水はその中に流入し、屋内には殆ど入つて来ていない。)。

(三) ところで、本件工事現場付近の地盤は、地表より約一五メートルから一九メートルまでの間に比較的密度の高い堅固な層が存するものの、これを除外すると約三七メートルの深さまでは相対的に密度、堅牢度共に低く、とりわけ地表から約一五メートルまでの範囲は含水量の多い極めて軟弱な層が続く状態であつた。

(四) このため、本件工事においては前記のとおり地表から約三七メートルの深さまでコンクリートの基礎杭が打設され、その工法としてはアースオーガーミルク注入工法が用いられたが、この工法は概略すれば、錐状の工具で予め杭を埋設するための穴をうがち、そこに杭を挿入した後周囲にセメントミルク等を注入して間隙を埋め固めるというもので、地盤に直接杭を打込むものではないため、騒音、振動の発生を回避することができるが、同時に杭の径より大きい穴をうがつため、地盤の状態によつては或る程度周辺の土砂等の流入、崩壊を招くことがある。

なお、本件工事で右の基礎杭は直径四五センチメートルのものが用いられ、原告ビルに面する被告土地の北側では、同ビル南側壁面から一メートル前後の位置に右壁面と平行して七本、同ビル西側では三本の基礎杭が打設された。

(五) また、矢板は基礎工事の地下堀削の際周囲の土砂や水が流入するのを防ぐため打設されるものであるが、その抜取りにより周辺の土砂が引上げられるなどして生じる間隙に土砂等が侵入し、隣接家屋の沈下の一因となることがあるため、基礎工事終了後もこれを抜取らず埋没されることが多い。

以上の事実を認めることができる。そして、これによれば原告ビルの沈下が本件工事現場に面する南側において生じ、その発生時期も本件工事の基礎工事の進行とほぼ併行していること、右基礎工事において原告ビルから至近距離で鋼矢板の打設及びその抜取り、地下堀削、基礎杭の打設など、周囲の地盤に影響を与えると考えられる工事が行われており、加えて本件工事現場付近の地盤が軟弱であること等を総合すると、原告ビルの沈下は、本件工事の基礎工事、なかんずく基礎杭の打設もしくは矢板の抜取り或いはその双方が原因となつて生じたものと認めることができる。

被告明建建設は原告ビルの沈下・傾斜の原因は昭和三九年から昭和四〇年にかけて原・被告両土地付近で行なわれた地下鉄工事及び大阪市のほぼ全域に生じている一般的な地盤沈下並びに原告ビル基礎工事の不十分さによる自重沈下にある旨主張するところ、<証拠>によると、右主張のころ本件現場付近で地下鉄四橋線建設工事が施工され、原告ビル前面(東側)車道部分も掘削されたが、その際原告土地で地盤沈下が生じたため原告ビルに下水管破損、地下室壁面のひび割れ等の被害が生じたことが認められるものの、前認定のとおり原告ビルは昭和四九年一二月二日ころに下げ振りを実施した結果では傾斜が認められなかつたのであるから、前記傾斜、その原因である南側の沈下が右地下鉄工事に基因するものとは認められず、一般的な地盤沈下の点についても、<証拠>によれば、大阪市では昭和の初年から戦中戦後の一時期を除き地下水の汲上げによる地盤沈下が進んでいたが、昭和三五年をピークに年間沈下量は減少に向かい、昭和四〇年以降は東大阪や臨海部の一部地域を除いて殆ど沈下がみられず現在に至つていることが認められるから、時期的にこれを前記原告ビルの沈下・傾斜の原因となしえないことは前同様であり、また原告ビルの基礎工事の不十分による自重沈下の点はこれを認めるに足りる的確な証拠がないので、被告明建建設の右主張はいずれも失当である。

なお、原告は、本件工事による原告ビルの沈下は前認定の程度にとどまらず原告ビル東側の道路面と比べて北側で三センチメートル以上、南側で五センチメートル以上であり、更に道路面も本件工事により沈下している旨主張するけれどもこれを認めるに足りる証拠はなく(<証拠>によれば、原告ビルとその北側に隣接する通称七福ビルとの間の歩道に面する部分には本件工事以前からコンクリートが張られてあり、このコンクリート面は現在七福ビルの側では建物に密着固定されているが、原告ビル側では同ビルから遊離しその間に若干の隙間を生じていることが認められる。しかし、右コンクリート面とその下部の道路敷石との間には道路面或いは原告ビル自体の沈下を推認させるような間隙は生じておらず、この状況よりすれば原告主張の程度の沈下が本件工事によつて生じたことを認めるのは困難であり、右主張に沿う<証拠>は措信できない。)、また原告がやはり本件工事によつて生じたと主張しその旨供述する原告ビルの床、壁、天井、窓ガラス等の亀裂及びれんが造の煙突の崩壊等の点については、<証拠>によると原告ビルの二階から三階、三階から四階へ通ずる各階段のプリズムガラス及び四階浴室の窓ガラスにひびわれが生じ、右浴室窓ガラスの下のタイルが一部剥落していることが認められるが、他方<証拠>によると、本件工事が着工された昭和四九年一一月下旬ころ、被告明建建設は原告立会いのうえ本件工事によつて原告ビルに損壊等の被害が生ずる場合に備えて、同ビルの外観、一階から三階までの内部について当時生じていた破損の状況等を検分し、これを写真に撮つたが、当時既に原告ビルの壁面には無数のひび割れが発生し、窓ガラスの破損した部分も存し全体として相当程度傷んだ状態にあつたことが認められるのであつて、このような状況に照らすと、前記のような原告ビルの損傷は本件工事以前から既に生じていたものである疑いが強く、原告本人の前記供述はにわかに措信できず、他に右損傷が本件工事に基因することを認めるに足りる的確な証拠は存しない。

判旨3 次に、被告明建建設の責任について判断する。

本件工事は、前認定のとおりその基礎工事のため、原告ビルの壁面からわずか一五センチメートルの範囲内に鋼矢板を打込み、被告土地全体を右鋼矢板に沿つて掘下げたうえ、コンクリートの基礎杭を約一メートルの間隔で三七メートルの深さまで打込み、しかもそのうち一〇本は原告ビルから至近距離の位置にこれを平行して打設するというものであるうえ、本件工事現場付近の地盤は地表から約三七メートルまでの範囲では概ね軟弱で、被告明建建設も右のような地盤の状態を本件工事に先立つて行なわれたボーリング調査の結果から十分認識していた(この事実は当事者間に争いがない。)のであるから、建築業者である同被告としては、右工事の施工が原告土地の地盤に影響を及ぼし原告ビルに沈下・傾斜の被害を生ぜしめる恐れのあることを予測し得た筈であり、従つて工事施工者として、着工前に予め隣接する原告ビルの基礎の状態を十分調査のうえ原告土地の土砂の流出、崩壊による原告ビルの沈下を防止するための完全な地盤補強ないし土留工事をなす等適切な被害防止の策を講ずべきであるのに、これを怠り、原告土地と被告土地との間に土留め用の鋼矢板を打設したのみで他には何ら右方策を講ずることなく本件の基礎工事を施工し、しかも右鋼矢板は隣接地の地盤に及ぼす被害を防止するためには抜取らず埋設しておくことが望ましいのにこれを抜取り、もつて原告ビルに前記沈下・傾斜の被害を与えたものであるから、同被告はこれによつて原告が被つた損害を賠償すべき義務があるというべきである。

判旨4 そこで原告の損害について検討する。

<証拠>によると、原告建物に生じた前記の沈下(南側において二ないし三センチメートル)・傾斜を矯正するためには、原告土地の地盤の状況を考慮すると、原告ビルの地下に支岩盤まで鋼管を圧入し、これを基礎としてジャッキで建物を持上げ固定するアンダーピニング工法によるのが確実な方法であるが、右工法による矯正工事費用は、昭和五〇年当時でも五〇〇〇万円前後、現在では六〇〇〇万円近くを要するうえ、右工事に要する三ないし四か月間の期間は一階部分全体が工事現場となるため事実上原告ビル全体の使用が不可能となるので、この間原告の家族は他に転居しなければならないこと、他方、現在原告ビルと同規模同程度のビルを新築するとすれば、その建築費用は多くても坪当り六〇万円、総額にして四四〇〇万円前後(ちなみに、<証拠>によれば、被告ビルの建築請負代金は一億五一〇〇万円であり、これを坪単位に計算すると約三五万円である。)にすぎず、従つて、原告ビルの南側を二ないし三センチメートル持上げるだけで、原告ビル全部を建替るよりはるかに高額の費用を要することが認められる。

翻つて考えるに、前認定の事実によると原告ビルに生じた沈下の程度は二ないし三センチメートルという比較的軽微なものでこの沈下及びこれに基因する建物の傾斜によつて現に生じている日常生活上の支障は、精神的苦痛はともかくとして、屋上からの雨漏り及びこれを原因とする天井等の腐触と一階入口からの雨水の流入及びこれによる地下室の溜水のみであり、前者については屋上に改めて防水工事を施したり南から北へ勾配をつけ直すか南側に排水溝や樋を設けるかして排水の方法を講じて天井等の腐触部分を補修し、後者については入口付近に高低をつけるか歩道との間に排水溝を設けるなどし地下室の溜水をポンプで排水するといつた方法により、前記の沈下そのものを矯正する工事に比してはるかに低額の費用で容易に除去、同復をなし得ると認められるのであつて、本件工事前から既に相当程度の損傷が生じており、かつ現在では建築後二〇年以上を経過している原告ビルの今後の耐用年数はさして長いものと考えられないこと、従つて前記程度の傾斜の状態が継続することによる原告ビルの構造への影響はたとえあるとしてもさほど重大なものではないと思われること等の事情を総合して勘案すると、原告ビルに生じた被害を回復するにあたつて前記のような新規建替費を超える巨額の費用を要する沈下矯正工事をなすことを前提にその損害額を算定するのは著しく衡平を失して相当ではく、むしろ右に述べたような原告ビルの沈下から具体的に生じている雨漏りその他の被害を除去、回復するための工事費用をもつてこれを算定し、沈下それ自体に対する原告の精神的苦痛は慰藉料の額を定めるうえで評価考慮するのが相当である。

そして、右当面の具体的被害を除去、回復するための工事一切をなすための費用としては、経験則上少なくとも一〇〇万円を要するものと推認され(右金額を超える費用が必要であることを認めるに足る的確な証拠は存しない。)、また、本件工事による原告ビルの沈下及びこれに付随して生じた原告の生活上の不安等の精神的損害に対する慰藉料は、右に述べた事情やこれにより原告ビルの建替時期が早まらざるを得ないであろうことその他一切の事情を斟酌すると、三〇〇万円とするのが相当である。

なお、原告は、慰藉料請求の一理由として本件工事による騒音、振動による精神的苦痛を主張しているが、<証拠>によれば、原告は本件工事着工後間もない昭和四九年一一月二九日被告明建建設の現場責任者の川村卓治を通じて被告ら側から本件工事の迷惑料として三〇万円を特段の異議なく受領していることが認められ、右金員の趣旨及び金額よりすれば、原告は、本件工事に必然的に伴う騒音、振動の被害については右金員の支払を受けることによりこれを受忍する旨を被告らとの間で合意したものと認められ、右合意当時に予測された以上の騒音、振動が本件工事によつて生じたことを認めるに足る証拠は存しない。

以上のとおり、本件工事により原告に生じた損害は合計四〇〇万円と認められ、その余の原告主張の損害についてはこれを認めるに足りる証拠はない。<中略>

二被告小坂井組に対する請求について

判旨1 被告小坂井組が被告長谷川から本件工事を請負つたことは当事者間に争いがない。

しかしながら、同被告が被告明建建設と共同して本件工事を施工したことを認めるに足りる証拠はなく、かえつて、<証拠>を総合すると、被告明建建設は被告小坂井組の株主で両者は従前から業務上協力関係にあり、被告小坂井組が受注した工事のうち比較的規模の大きいものは被告明建建設が下請して施工していたこと、本件工事についても、請負人として被告長谷川と工事請負契約を締結したのは被告小坂井組であつたが、同被告は予め被告長谷川の承諾を得て本件工事全部を被告明建建設に下請させたため、自らは本件工事に先立ち被告土地上に存した被告の旧建物の取毀工事を行つたのみで、本件工事は全然施工していないことが認められるので(なお、<証拠>によれば、本件工事の現場員届や原告に対する迷惑料の支払は被告小坂井組の名においてなされているが、これは被告長谷川との契約上の請負人が同被告であることによるものと推認され、右の認定の妨げとなるものではない。)、被告小坂井組に対し本件工事を施工したものとして民法第七〇九条により右工事による被害の賠償を求めることはできないというべきである。

判旨2 もつとも、建築請負業者がその請負つた工事を他の業者に下請させ、自らはこれを施工しない場合であつても、元請負人が下請負人に対し工事の指揮をし或いはその監督の下に工事を遂行させるなど両者の間に使用者と被用者又はこれと同視しうる関係があるときは、元請負人は民法第七一五条により下請人が工事を遂行するにつき第三者に加えた損害を賠償する義務があり、また、元請負人が下請負人に対してなした注文又は指図に過失があるときは、元請負人は民法第七一六条によつて右損害賠償責任を負うものと解すべきであるが、被告小坂井組が本件工事施工について被告明建建設を直接又は間接に指揮監督する関係にあつたこと及び被告小坂井組の被告明建建設に対する注文又は指図について過失があつたことはいずれもこれを認めるに足りる証拠が存しない。<中略>

三被告長谷川に対する請求について

1 被告長谷川が本件工事の注文者であることは当事者間に争いがないところであり、本件工事の基礎工事により原告ビルに沈下・傾斜及びこれに付随する被害が生じたことは前示一2のとおりである。

2 しかしながら、被告明建建設が先に認定したような内容方法で本件工事を施工するについて、注文者たる被告長谷川の側で具体的な注文ないし指図をしたと認めるに足りる証拠はなく、かえつて<証拠>によると、被告長谷川は建築関係には全くの素人であるので本件工事の内容、方法については専門の建築業者である被告明建建設に一任していたこと、但し建築工事が近隣に対して騒音、振動、家屋の損傷等の被害を与えることがあるという一般的認識はあり、また、昭和三九年ころ行われた地下鉄工事の際の地下掘削による地盤沈下の経験から基礎工事で地下を掘削する場合は矢板等で十分な土留を施す必要があり、矢板を抜くと地盤崩壊の恐れがあるという一般的な知識はあつたので、工事を施工する被告明建建設に対しては本件工事に先立つて右工事により隣接建物に被害を生ずることのないよう万全の措置を講ずること、隣接地との境界には十分な土留を施し、土留め用の鋼矢板は基礎工事完了後も抜取らず埋設したままにしておくこと、隣接住民に迷惑料を支払うことを申入れ、被告小坂井組との請負契約でも右費用は請負代金の一部として被告長谷川が負担することになつていたこと、被告長谷川は、本件工事開始直後被告明建建設の現場責任者川村卓治から原告が本件工事の騒音について苦情を申入れている旨聞かされ、その時は原告にまだ迷惑料を支払つていないことを知つてすぐこれを支払うよう川村に指示したが、原告ビルの沈下・傾斜等の被害については基礎工事の終了した昭和五〇年三月初めころ原告から内容証明郵便でその善処方を求められるまで知らないでいたことが認められる。

判旨そうすると、本件工事による原告ビルの被害発生が被告長谷川のなした特別の注文ないし指図に基づくものであるとはいえず、また、本件工事現場付近の地盤が軟弱なものであるとはいえそれは右地域固有のものではなく大阪市域の大部分に共通するもの(前記丙第二号証によつて認められる。)であるから、建築関係には全く経験を有せず、本件工事を専門業者たる被告明建建設に一任し、なおかつ同被告に対し自己の一般的知識に基づいて隣接家屋への被害防止について概括的注意を与えていた被告長谷川としては、それ以上にあえて専門業者たる被告明建建設のなす設計・施工内容に積極的に介入し、その意見説明を求め、或いは工事進行中に遂次これを確認して自ら適不適を判断したうえ隣接家屋に対する被害を未然に防止するための具体的かつ詳細な工事方法等の注文、指図をなすべき注意義務はないというべきである(なお被告長谷川が原告ビルの被害発生を知つたのはその原因たる基礎工事が既に終了して後のことであるから、これを知つた後の被告長谷川の対応の適不適と損害発生との間には因果関係が認められない。)

(山本矩夫 矢村宏 三代川三千代)

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